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(調査レポート)デジタルユースワークとは何か #1

目次

people watching PC monitor

Wisaでクリエイティブデザイナーをしている、シーザーです。

ヨーロッパを中心に最近、ひしひしと注目を集めている「デジタルユースワーク(Digital Youth-Work | DYW)」。

Wisaは2009年から日本で初めて不登校・ひきこもり支援としてDYWを開始し、2012年に厚生労働省後援日本テレワーク協会よりテレワーク推進賞、2016年には総務省からテレワーク先駆者百選に選出されました。

私たちにとっては、設立時(ストーリー)から日々、活用してきたメタバースやオンラインゲーム。ICT・デジタルテクノロジーを駆使した若者福祉の実践=DYWについては、まだまだ日本で知られていないのが現状です。

そこで、今回の記事ではヨーロッパの文献
「デジタルユースワーク政策提言の開発-教育ニーズと実践事例」(原文|”Developing digital youth work Policy recommendations, training needs and good practice examples”(EUROPEAN COMMISSION 2018)の内容を中心にご紹介しながら、DYWとは何か、について読み解いていきましょう。

この記事を読めば、DYWをまだ知らない人やこれから取り組もうとしている人にとっても有益な情報となります。

第一回目-#1の今回は、DYWが奨励されている背景と何のために、そしてどのようにして実践されているのかを解説いたします。

目次

  1. DYWの背景
  2. DYWとは何か?目的と方法
  3. 世界各国の動き
  4. 具体的な取り組み
デジタルユースワーク画像01
義務教育でも拡大するデジタル教育

1. DYWの背景

DYWはどのような背景のもとに提唱されはじめたのでしょうか?

ご存じの通り私たちが生きる現代は、新しい技術がどんどん登場しインターネットを通じて何十億ものモノとヒトがつながっています(Gartner 2016)。そして、デジタルテクノロジーがどのように構築されるかを知り、その課題や危険性を理解すること好奇心を持って活用していくこと、さらにそのテクノロジーがもたらす影響について批判的になることはデジタルリテラシーや21世紀型スキルと呼ばれています。この時代を生きる人々にとってとても重要なことです。

 

□デジタルリテラシー(Digital Literacy)

・デジタルテクノロジーの構造理解

・デジタルテクノロジーの課題・危険性の理解

・好奇心にもとづく活用

・デジタルテクノロジーがもたらす影響への批判的思考力

 

このようなリテラシーを踏まえ、デジタルデバイスを手にしたすべての若者に必要なことは、技術的なデジタルスキルやアジャイル(柔軟)なマインドセットです。これから未来、社会で創造されていくすべての仕事や生活様式は、それを後押しするものである必要があります。

デジタルユースワークの概念図

2. DYWとは何か?定義と目的

ユースワークとは日本語で「若者支援」と訳されることが多いですが、「若者を対象とした支援」といったニュアンスで捉えられてしまうとユースワークの本質が歪められてしまうこととなるでしょう。まずはアイルランドの定義が最も有名で包括的ですのでご紹介します。

 

「ユースワークは、若者の主体的(自発的)な参加によって個人的・社会的発達を高め補助するための教育プログラム設計です。ユースワークによって、公的・学術的教育、職業能力開発を補っていくことができます。ユースワークは、主にユースワークを実践するボランティア団体によって提供されます。」

“‘Youth work’ means a planned programme of education designed for the purpose of aiding and enhancing the personal and social development of young persons through their voluntary participation, and which (a) complements their formal, academic, or vocational education and training; and (b) is provided primarily by voluntary youth work organisations.”

src:Irish Statute Book Archived May 8, 2005, at the Wayback Machine Government of Ireland.

 

 デジタルユースワークは、ユースワークのデジタル・トランスフォーメーション(DX)を焦点にした新しいユースワークです。

「デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)」とは、エリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念です。DXは、ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させていく過程を意味しています。現代では社会のインフラ、制度、組織、生産などすべての局面でICTが活用され、このDXが進展しています。さらに、ICTの能力を最大限に引き出すことのできる新たな社会・経済システムが誕生しているのです。

 

以上を踏まえて、ユースワークとDXの融合したものがデジタル・ユースワークということとなります。

デジタルユースワークの定義
デジタルユースワーク(DYW)とは、デジタルメディアやテクノロジーを積極的に活用する形態のユースワークです。DYWは、単なるユースワークの方法論ではなく、あらゆるユースワークの設定 (オープンユースワーク、青少年に有益な情報とカウンセリングの提供、ボランティア活動、若者の自立と就業までを一貫して網羅した概念です。

DYWは従来のユースワークと目標を共有しています。ユースワークをデジタルメディアとテクノロジーを使用するDX化によってユースワークの本来の目的実現を目指すことができます。

DYWは、オンライン環境・対面支援でも、またはこれら 2 つが混合した環境でも行うことができます。さらにユースワークにおける活動または内容において、デジタルメディアとテクノロジーが主要な活動の場となることもあります。

ユースワーカーとは?

DYWはユースワークと同じ倫理観、価値観と原則によって支えられており、この文脈におけるユースワーカーは有給とボランティアの両方を指しています。(EUROPEAN COMMISSION 2016-2018)。

 

 

3 DYWの可能とする条件

それでは、DYWはどのような条件によって、どのように実践するのでしょうか?

それは次の7つに集約されています。

  1. 社会のデジタル化(DX)
  2. DXに機敏に対応できる思考の発達
  3. 情報・デジタルリテラシー
  4. コミュニケーション
  5. デジタルクリエイティビティ
  6. 安全性の意識
  7. 反省・評価

まず必要なことは、社会自体がデジタル化することです。いくら若者がデジタルの知識をもって、それを駆使しようとしても、社会自体がそれについて理解が不足していたり、それを阻害するような仕組みを残していてはDYWはスタートできません。

この点、2019年に生じたコロナ感染拡大は、世界全体がデジタル化する契機となりました。DYWは、アフターコロナの創造的は福祉開発方法として期待されているのです。

次に必要なことは、ユースワーク実践者が自分の住む地域や趣味嗜好において、「どのようなユースワークを実践するのが適当か」を知ることです。さらに、それをどのように計画・実践・反省するかを開発することも重要です。

また、情報やデジタルを用いるときには、それらに対するリテラシー(literacy:判読能力)が不可欠です。もし、デジタルリテラシーが不十分なまま使用すると、法的な問題に触れてしまったり、自分と他者を傷つけてしまう恐れさえあります。

このほかにも、デジタルでコンテンツを作成するために、もっとも最適な手段・スキルについて知ることも重要です。たとえばグラフィックデザイン、ドキュメント作成から動画制作、プログラミングの基礎的な理解に加えて、AIやデータサイエンスについての知識も必要となっています。

最後に、ユースワークを行う上での安全性、自分たちの実践を反省し、評価する方法などを準備する必要が高まっています。ICTを介した詐欺や偽情報の反乱、言葉や映像を介した暴力とハラスメントなど、デジタル社会には多くの新しい脅威や危険も拡大しているのです。

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いかがでしたでしょうか?

次回、#2ではヨーロッパで、DYWについてどのような意見があるのか、また具体的にはどのような実践がされているのかについて例を交えながら解説いたします。

おたのしみに~ツ!

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