わかもの応援インタビュー第2回 ~「仕事」とは人を幸せにすること!?~

「自分自身も、人間いつ死ぬかわかない。はやく好きなことをしておかないと」

ものづくりのきっかけはどういったものですか?

もともとアマチュアで、バンドを組んで音楽をしていました。ギターを弾いてて、やっぱりギターって故障したりしますよね。そこでリペア ショップなんかに行くんですが、なかなか満足に修理してもらえない。それで「自分でやってみよう!」って自分で修理してみたんですが、やっぱりうまく いかなかったんです。
そこでまた色々なリペアショップをさがしたんですが、ある1件のリペアショップが見事に修理してくれたんですよ。 ちょうどそこで「趣味のギター製作教 室」っていうのをやってたんですね。そこに行ったのをきっかけに、このギターいじりに夢中になってしまったんです。
それが30歳過ぎぐらいの頃ですよ。そのときは、こういう仕事で脱サラなんて考えてもみなかった。ただ木材を削って、作っていくのが楽しいなーってい う・・・

どういったきっかけと、タイミングがあったんですか?

大きくは、3つのきっかけ要素がありました。
1995年に阪神大震災がありました。私の実家が宝塚、大学が神戸だったこともあって、被災地周辺に知り合いがたくさんいたんですよね。急に死んでし まったり、一瞬で財産を失っていった友人や知人がいました。 そのとき、「自分自身も、人間いつ死ぬかわかない。はやく好きなことをしておかないといけな いな」っていうことを深く感じたんですね。

2つ目のきっかけ。当時私は30代後半で営業課長という立場でした。バブル崩壊後は、景気が非常に悪くなっていって、勤めていた会社でも「メンバー半分 で売上は倍上げろ」みたいな方針になったり、リストラが始まったりしたんですね。 そして自分自身が「人をリストラする側」に回ってしま いました。
やはり嫌な仕事でして、ウンザリしちゃったんです。SONY DSC

3つ目は、1999年から2000年に明けるとき、裏にある玉造稲荷神社に初詣に行ったんですね。ちょうど2000年、私もちょうど40歳、「むちゃくちゃ 数字的にキリがええじゃないか!」と(笑) それで新年そうそう、部長に「辞めさせて下さい」と脱サラしました。

「こんな仕事で飯が食えたらいいなぁ」っていう漠然とした、子供のような夢でした

ギターのものづくり ということで独立するという夢をずっと持ちつづけていたんですか?
そうですね。いつかはやってみたいな、と朧げに思っていたんですが「こんな仕事で飯が食えたらいいなぁ」っていう漠然とした、子供のような夢でしたけどね。

ちょうどIT革命と言われた時代で、私もシステム販売の仕事をしていたということもあって、私自身がマッキントッシュを買ったんですね。それでその時期 に、自分のホームページを作ったんです。自分の趣味で造ったギターを自慢するっていうだけのホームページだったんですが、段々と「修理してくれないか」な んて依頼が入ってきたんですよ。 自分の扱ってるシステムがどういったものなのか、っていうのを知るために始めたことなんですが、「ああ、なるほど。 これが『インターネットは市場空間』ということか」って…

自分の「仕事」によって、人が幸せになっていて欲しいんです

ものづくりのお仕事の、難しいところをお聞かせいただけますか?
金額が25万円以上のものを僕は作っているので、払う人にとっても小さな額じゃない。
しかも私にも「つくれるもの」「つくりたいもの」、逆に「つくりたくないもの」っていうのがあるんですね。
自分が作りたいものと相手のリクエストがやっぱし、一致しないと。
その意味で相手のリクエストの意気込みに自分が応えるために、まずそのリクエストが自分のものづくりの範囲なのかということを見極めないとダメなんですよね。

ホームページを見て依頼されてきたお客様のお話を伺うだけでは、簡単に引き受けられないですね。
もちろんそうです。実際にお店に来てもらって、しっかりと相手の希望を聞き出すというコミュニケーションが、絶対に不可欠。 しっかり相手のオーダーを聞いて、それを完成させる、相手をがっかりさせないという倫理感が、絶対にマンツーマンでのものづくりには必要です。
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自分がつくったもので、お客さんが楽しんでもらって幸せになってくれる、っていうことが一番なんです。それって商売の上でも大事なんですよね。作って手渡したものでお客様がガッカリしてしまったら、自分の商売も長く続いていかないわけです。

長い不景気に入ってから、ともすれば利益だけを追及したり「数字さえ上がればいい」っていう商売が増えてきてしまっていますね。
そういうおカネのためだけにする商売っていうのは、やってる本人にとっても絶対ストレスになってると思うんですよね。 それって、僕がサラリーマン時代にやってた「リストラ」をしてた時のストレスと同じ種類のストレスかもしれない。 自分の仕事によって、人が幸せになっていて欲しいんです。
自分はそういうストレスを二度と感じたくないから、ウソは絶対つかないし、お客さんに納得してもらった上で自分の作品を買ってもらいたい。 そういう仕事へのスタンスが世の中に広がっていれば、きっと不況の中でももう少しみんな幸福感を得られていたと思うんですよね。

自分が作ったギターをお客さんがステージで演奏しているのを見る、っていうのが極上のご褒美です。 私は音楽を演奏する芸術家ではなく、道具を作る職人 ですからね。料理で言えば私は包丁を作ってるわけですよ。料理を作る人が、僕の包丁を使っておいしい料理を作ってくれるのが、嬉しいわけです。まったく演 奏されないで床の間に飾られてるだけじゃなくて、実際にライブでいい音で演奏されているのを見ると、本当にうれしい。

時代を越えてきたホンモノを、僕は大事に思ってる

ご自身が「つくりたいもの」、というのはどういったものですか?
「奇を衒(てら)わないもの」、 と言いましょうか・・・ 僕が作ってる鉄の弦を使用するスチールストリングスギター(エレキギターとかフォークギター)は、元来1940年代のアメリカ で生まれたものです。それから現在に至るまでの70年という長い年月の間、いろんな種類の、いろんなカタチをしたギターが生まれてきたわけですよ。  現在定番となっている、Fenderのテレキャスターとかギブソンのレスポールとか、セミアコのES335とか・・・10本の指でおさまるものくらいし か、生き 残ってないんですよね。それ以外の多くのギターは売れずに消え去っていったわけです。
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今・現在残っていないその他、数多くのギターっていうのは、歴史の評価に耐えられなかったということです。 音楽のジャンルや中身が目まぐるしく変わってきた時代・音楽の歴史を経て、ホンモノのギターっていうのはずっと使われ続けてきたわけです。
そのギターはいいギターだ、ギターリストがイイと思うから使う、カタチあるものだから必ず壊れる、でも良いギターだから治して使いたい、修理する、しかも 簡単に安く治る、だからまた使う、こういうことを何十年も繰り返していき、そのギターはヴィンテージと呼ばれる名器になるわけです。
時代を越えてきたホンモノを、僕は大事に思ってるんです。そういうホンモノを僕は造りたいんですよ。 最初はオリジナルのデザインでやってみたりした頃もあったんですが、やっぱしダメだったんです。
たとえば「フェンダーのストラトキャスターのここの部分の厚みが、44,45ミリだ」っていうのは、やっぱし理由があるわけなんです。 歴史を乗り越えて来た理由がそこにある。
それを自分で修理したり、造ったりしていると思い知るんです。体感するんですよね。やっぱりここの寸法はこうなってるけど、ちょっと変えてみよう、なんてするとたちまち「ああ、やっぱしダメだな」ってなるんですよ。
ものづくりって「孤独にものを作ってる」っていうイメージが、外から見てるとあるんですが・・・
今まであたり前のようにテレビで色んな音楽家やアーティストがギターを演奏してたのを見ますけど、ギター1つのなかにも非常に長い歴史がある、ということを感じます。ものづくりには歴史との対話があるんですよ。
古い40年、50年くらい前のギターを修理するすることがあります。そうすると、前のリペアマンが修理した跡なんかを見つけることがあるんですよね。  どういうつもりでその人がここの接着剤を使ったんだ、っていうのが僕が修理する段階でわかったりするんですよ。「おお、お前も苦労したなぁ」なんて。 (笑) たまにリペアマンのサインが小さく鉛筆で記されてたりもします。たとえば「1964年○○・ウィリアムス、チェンジド ブレイス(力木)」なんて 書いてあるんです。 会ったこともない人達と、1つのギターを通して時間と歴史を越えた対話をすることができる、って魅力が僕のやっている仕事にはありますね。

ひとつの夢を追うっていうことは、その他の可能性を捨てるっていうこと

夢を負う若者へ、メッセージをいただけますか?
ひとつの夢を追うっていうことは、その他の可能性を捨てるっていうことでもあるんですよね。たとえば僕の場合、脱サラをするっていうことは、サラリーマン の安定した収入を捨てるっていうことだったんですよ。 決断をして勢いをつけて「せーの」で夢の道を選ぶっていう。そこの決断をしっかり すれば、失敗しても後悔がない。
一度、決断をして夢の道を進んだら、やっぱしがんばらないといけないですよね。辛い経験や行き詰まりは必ず あります。僕だって、何度もこのものづくりの仕事で失敗を経験して反省してきました。この世に仕事で失敗しない人は居ません。だから失敗しても、めげずに 下っ腹に力を入れて夢の実現の為に再起しよう。
選択肢を積まれてしまって、自分のやりたいことがわからなくなっちゃって立ち止まる若者も多いということでしょうか。
インターネットやテレビで、「選択肢」が氾濫しているんです。でもそういった情報は、すべてモニター画面の向こうのもので、身近に実感できない「選択肢」ばかり。 迷ってしまって当然ですよね。
「ひきこもり」等を肯定するわけではないけど、何もやりたくないときは何もせずにじっとしておくこともイイと思います。 お腹が空いてないのに、レストランのメニューだけたくさん見せられて「さあ選べ!」なんて言われても、選べないのと同じじゃないですか?(笑)
今の若者が生まれた環境は、年配者が生まれた環境とまったく違います。すでにモノが溢れていて、経済も低成長です。育った環境が違うのですから、年配者が言う精神論や、合理的ではない事柄は若者に理解できなくて当たり前です。
年配者はいろいろな経験を積んで先を見通す力があるから、「大リーガーになりたい」「ロックスターになりたい」とかっていう夢を若者が話してたりするのを 聞くと、「あーム リムリムリムリ!」なんて言っちゃうんですが、それは言うべきではないんですよね。 たとえば「ひきこもり」の子が「スノーボーダーになりたい」とか夢を もったとして、本当になっちゃうかもしれないし、それをきっかけに社会に出て活躍するかもしれないじゃないですか。 そういう若者の芽を年配者が摘んだら、絶対ダメですよね。選択肢を選ぶのは自分自身で、「一つのものを選択して、他は捨てるという」という若者自身の決断によって行われなければなりません。

サラリーマン時代の話なんですが、たとえば5人の営業チームで成績を出すっていうときに、成績の悪い人を伸ばすよりも、成績のすでにイイ人を伸ばす方が 組織としては楽なんですよ。だから落ちこぼれなんていう立場の人は、そのまま「辞めてくれ」っていう方向になっちゃう。
成績がなかなか仕事 で出せない人には、「ちょっと頑張れば達成できる目標」を設定してみるっていうのが効果的でした。その小さな達成ができれば「よくがんばった!」ってしっ かり褒めて一緒に喜ぶっていうことが効果的でした。 小さな成功体験の積み重ねです。でも今の企業は、そういう「人を育む」っていうことをする余裕がない んでしょうね。
私の周囲にも不登校で悩んでる人がいるんですが、そういう人達を見てると子供のころから「OK!」
「君はそれでいいんだよ!」って周囲から認められることが少な過ぎるっていう共通点があるんですよね。
「勉強しなさい!」「アルバイトくらいしたらどうなの!?」「テレビやゲームばっかりしてちゃダメでしょ」って家で言われて、学校では学校で埋もれてしまってて、結局は独りでゲームセンターなんかで遊んでるっていう・・・
周囲から認められたり、「君はそれでいいんだ、OKだ」っていう小さな達成と成功とかが無いと、次への意欲やチャレンジをする自信やエネルギーが出てこないですよね。
そういう経験が少ないままで来た人は、今からでもさかのぼって成功体験や達成感を体験していくことが大事なのではないでしょうか。
成功した時の快感を知っていれば、「失敗してもまたチャレンジしよう!」っていうエネルギーが湧きますからね。
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一人一人のパーソナルな幸せが集まって、社会全体が幸せに

現在の社会経済状況について、お話をいただけますか?
若者の価値観が多様化してきて、音楽でもファッションでも1つのムーブメントが起こりにくくなってきてます。一方で商業の世界では、どんどん多様な零細企 業は淘汰されて、大手企業だけが生き残ってきてるっていう不思議な矛盾がありますよね。 消費者としての価値観の多様化とは真逆に、事業としての成功ルー トは画一化していってたり。
音楽で言えば、たとえばあるレーベル会社がインディーズにあったとすると、事業としてはその会社はずっとインディーズで踏み台にされちゃったり、つまり産業界の格差が固定化してきてるというか、一見すると多様化しているようで実際は画一化していってるんですよね。

でもあえて若者はそういう社会経済や政治に、目を向けないほうがいいと思うんです(笑) 若者はまずパーソナルな欲求に、「あの人とデートしたい」とか、「自分の夢をかなえたい」って素直に進んだ方が幸せになれる気がします。
たとえば私の仕事、これも世の中で決して目立った仕事ではないと思います。でもその小さな仕事のなかに、幸福と価値を見出す、まずその希望を叶えるっていうことが大事だと私は思ってます。
そういう一人一人のパーソナルな幸せが集まって、社会全体が幸せになっていくわけですよね。だから小さな話なようでいて、まずは自分自身の小さな幸せを実現していくっていうことが、大きな意味で社会にとっても大事だと思います。 (了)



【お店情報】
ジョーフォレスト ギターハウス
ものづくりの温もりが伝わり、自然と人が集まりたくなる空間でもあるギター工房です

住所:大阪市中央区玉造2-3-24
TEL:06-6943-0093
FAX:06-6943-0093
HP:http://www.joeforest.net/

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