FaY | ラオスの民話 #2 パームファミリー

パームファミリ―表紙

目次

パームファミリ―表紙

 

 

 

 

パームファミリー イラスト、WISA|FaYプロジェクト

2021年11月からスタートした、Wisa(日本)&CAF(ラオス)の協働プロジェクト、「民話と若者」FaY(Folklore and Youth | フォークロア・アンド・ユース)。

 

今回、2022年2月に発表した 「パームファミリー」 (参照リンク)をWEB公開することとなりました。

 

民話、「パームファミリ―」は息子を失ったパーム族家族の悲しいストーリー。ラオス北部の村に伝わる托鉢(タクバーツ)の起源を明らかにしています。

 

パームファミリ―(絵本・日本語) ダウンロード

 


 

パームファミリー1 昔々、パーム族の家族がいました。
彼らには1人の息子がいました。
父親と母親はたった一人の
息子を、とても可愛がっていました。

しかし彼が16歳になった時、突然亡くなってしまいました。
彼らの両親は悲しくて、悲しくて
食べることも寝ることも出来なくなりました。

パームファミリー2

息子が亡くなったあと、
パームの夫婦は伝統的なお葬式の方法にしたがって、
河を渡った南東の小さな山の森の前に丸い穴を掘り、
息子をその穴のなかに入れました。
そして、周囲には息子が大好きだった花をたくさん植えました。

夫婦は一緒に息子を育てた家政婦のために新しい家を建て、
その家で使いそうなものを買いそろえました。
そしてとても信頼している家政婦に、
お墓の息子に毎日の食物をお供えするよう伝えました。

ある日、大雨が降りました。
こんな大雨は、誰も経験がしたことがありません。
川の上流にあるお墓に家政婦はいつものように行こうとしました。
しかし、川は「ゴォーゴォー」と大きなうなり声をあげて氾濫し、
とてもじゃないですが渡ることはできません。
家政婦は「今日は仕方がない…と、帰宅することにしました。

帰宅する途中、彼女は数人のお坊さんたちが
托鉢しているのを見かけました。
彼女は、手にもっていたお供え用の食べ物(お供えもの)を
托鉢僧に渡すことにしました。

「この食べ物は私のご主人様のご子息のものですが、
今日の洪水でお持ちすることができなかったのです。
代わりにどうか、お受け取りください」

いっぽう、同じ日の夜、父親は死んだ息子の夢を、初めてみました。
息子は涙を流しながら
「僕が死んでから、たった1度、
昨日しか食べ物を受け取っていないんだ…。」と言いました。

父親は朝起きて、うろたえながら不思議に思いました。

「信頼している家政婦は毎日、
息子にお供えものを運んでいるにちがいない。
しかし、なぜ息子はたった1日しかお供えものを受け取っていないんだ?」

父親は家政婦の家まで行き、たずねました。
「お墓の息子には、毎日、お供え物を届けているだろうね。
間違いないね。ねえ、本当に毎日行ってくれているのかい?」

「もちろんです、ご主人さま」と家政婦は答えました。

「しかし、ちょうど昨日だけは、
大雨のせいでお墓に行くことができませんでした。
怖くて怖くて、川を渡ることができませんでした。ごめんなさい。
お供え物とご飯は、帰りに出くわした僧たちに与えてしまいました」

父親は家政婦からその話を聞き、
きっと彼女が言うことは本当であろうと考えました。
だとすると、息子との不思議なやり取りは何だったのでしょうか。

次の日、ちょうど村を訪れる仏陀に相談しに行くことにしました。
パームの父は、自分の体験を話しました。
仏陀は、目を閉じたままじっとその話を聞いていました。
そして、薄っすらと眼を開くと、こう言いました。

「パームよ、お前がもともとやっていたことが間違いだったのだ。
もし息子にお供えものを届けたいのなら、
お墓にお供えをするのではなく
お坊さん達にあげなくてはならなかったのだ」

父親は、ようやく息子の言葉を理解できました。
家政婦が托鉢をした食べ物しか、
息子のもとには届いていなかったのです。

その後、パーム族は、仏教の信者となりました。

おしまい

 

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