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優先席は必要か

優先席とは、その名の通り特定の条件を満たす方に対して、優先的に割り当てられる席です。かつては、電車やバスなどの公共交通機関において見かけることが多かったものの、バリアフリー化が叫ばれて久しい現在においては、その導入事例には、きりがありません。

それほど世の中に浸透したからにはそれなりの理由があったのは明確です。やはり、多くの人が「優先席は必要だ」と思っているからなのでしょう。それは根本に「それをすればいい結果を生み出すから」と思っているからなのがほとんどなのです。そこで、私はあえて声を上げたい「電車の優先席、必要ではないのでは?」

尤も、この意見を電車の中でいきなり叫べば反論がすぐさま来るのは必至です。いえ、むしろそれが来なければ、それはつまり私の意見がもっと社会一般的な考えであり、それによって今の優先席制度も変更されていることが容易に想像できるからです。

優先席
「優先」であり「専用」ではない

そもそも、優先席は「優先」される席であり「専用」ではありません。尤も、「専用席」にしてしまうとその分区別する要素が強くなってしまいます。行き過ぎてしまえば、差別とも言われかねません。とはいえ、席を譲らないというのも困った話です。そういう観点から作られたような制度なのです。

私はこの制度について批判しているわけではありません。鉄道会社の作る駅の構造や車両の構造を見ても、優先席部分ではつり革がほかの部分と比較して長くなっていたり、網棚の高さが低くなっていたりします。また、混雑時には携帯電話の電源を切るようにという呼びかけも行っています。ペースメーカー等の危機に影響を与える可能性を考慮してのことです。

それだけやっているのだから、別に見直す必要はないのではと思われる方も多いかもしれません。しかしながら、そういった方にはいろいろな視点からぜひ見ていただきたいのです。

例えば、朝夕のラッシュの際の満員電車を想像してみてください。一般の乗客は新聞を読むどころか、スマホさえ触れないほどの混雑になることも容易に想像ができます。そういったときに、いわば「何が起こるかわからない」方々は果たして乗車するのでしょうか。尤も、それに乗らなければならないといった状況がある可能性はありますし、まったくもってその電車に乗らないということを完全に証明できるとは言えませんが、多くの場合そういった方々はこの混雑を避ける傾向にあります。

そうした場合、優先席には誰が座るか。それは一般の乗客になるわけです。別に専用席ではありませんし、優先席だからと言って座れるところにも座らず混雑を増すというのも本末転倒な話です。

では、逆に昼間の地方を走る鉄道を想像してみてください。乗客はまばら、優先席も満席ではないし、当然それ以外の一般の座席にも空席が目立ちます。そういった中で、わざわざ乗客は自分たちが座る場所を「ここだ」として決めて座るのでしょうか。

優先席の使用相手として想定されている方々でさえも、実際には一般の座席に座ることがあります(私の祖父もそうでした)。通勤電車の中の座席は二つの状態しかありません。それは座っているか座っていないか。座席予約など、特急のようなサービスは受けられないのです。

車内
乗車率100%の時は困るよね

では、一番困るのはどのようなときか。それは、ほどよい混雑をしたときになります。座席がほとんど埋まり、そこにたまたま、体の不自由な方が乗ってきたと想像してみてください。人々はどうするか。きっと、一般の座席に座っている人は「優先席に行けば、席を譲ってもらえるだろう」と思うでしょう。えぇ、暗黙の了解により、人々の中には「優先席で無ければ席を譲る必要もない」と考える人が一定数存在するのです。では、優先席はどうかとみてみると、あれま。座っている人が新聞を読んだり、寝ていたりするではありませんか。優先席はおおよそ5人掛けですが、どうやら全席埋まってしまっているようです。

これで誰かが動けばいいのですが、人間の集団心理の中に「誰かが動くからいいや」というものがあります。優先席に座っている一般の乗客にも少なからずこの心理が当てはまってしまうのです。

結果、座りたい人間がどこにも座れず、結局「誰かがやるだろう」という考えのもと「自分のできることはした」という考えが人々の心の中には出てくるわけです。何も座りたい人は「優先席だ」と思って座るわけではありません。もとを考えれば「座ること」が求められるのであり、それがどのような席であろうとも、座れればそれでいいという方も多いはずです。鉄道において、優先席だからと言って特別な設備が用意されているわけではないからです。だからこそ、私は優先席が必要ないと思うのです。

網棚が低いじゃないかという指摘があるのでしたら「じゃあ、全車両で網棚の高さを低めに設定すればいいじゃないか」と反論したいのです。

一番重要なのは「席を譲ること」であり「優先席に座らないこと・座ること」ではないのです。学生や社会人の中には「大変だ」など思われている方も多いと思います(私もそう思うことはありますし、座りたいと思うこともあります)が、やはりもっと必要とされる人がいれば、そういった人に席を譲るということは優先席以上に必要なことだと思うのです。

優先席によって人が席を譲らなくなったり、押し付けあったりする。そんな世の中になるのであれば、私は優先席など必要ないと思ってしまうのです。皆が席を譲り合えばいいだけのことなのですから。

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